「今から下半身麻酔で手術をします」
緑の手術服が言った。
「それって痛いですよね。局所麻酔は・・・?」
この期に及んでも痛いのは嫌な私。
「あのさぁ、怪我しちゃったのはしょうがないんだから、
腹くくってよ!」
うっ・・・医者らしからぬ言葉・・・
でも緑の帽子と緑のマスクの間の目は哲ちゃんに似てる。
「大丈夫だよ、痛くないってば。
ほら、痛くないでしょ?」
背中の方で手術着が言う。
痛くなかった。
全然・・・
麻酔を打った後、何やら用意しているのか、
ほったらかされている私。
「あのぅ・・・怖いんですけど。
点滴で寝かせてもらえませんか?」
「う~ん、後でね。今はダメ」
・・・しばらく後。
「あのぅ・・・寝かせて・・・」
「まだダメだったら!」
でも、いつの間にか寝ていて
何をされたのか全く判らなかった。
気が付くとガランと広い部屋。
遠くに夫クンが立っていた。
「あっ、パパだ」
ニコッと笑ったら夫クン、腰が抜けて椅子にへたり込んだ。
「どうしたの?怪我したとこが見えたの?」
「ううん、見えないよ。
わからないけど、座っちゃったんだ」
「ふうん・・・」
自分の足を確認すると、包帯グルグルでピクリとも動かなかった。
見えるわけないっか。
そのまま夫クンと病室に連れて行かれる。
ストレッチャーの上の私は天井を見ていた。
だから自分の入る病棟がどんな所なのかよく判らなかった。